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国への要望書

 


   

概 要

「ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書」を提出       2015-10-28

2015年10月28日、薬害オンブズパースン会議は、関係各企業、厚生労働省、文部科学省、関連学会に対し、「ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書」を提出しました。

ベンゾジアゼピン系薬物とは、抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもつ薬剤で、日本国内で販売されている抗不安薬と睡眠薬のほとんどがそれにあたります。

ベンゾジアゼピン系薬物は、上記の作用を有する一方で、常用量であっても数週間あるいは数か月間の使用によって耐性が生じ、かかる耐性の発現によって身体的・精神的依存につながる可能性があります。そして、身体的・精神的依存が形成されると、記憶障害、見当識障害、錯乱、幻覚、妄想、けいれん発作、離人感、運動知覚の異常など、日常生活に重大な影響を及ぼすほどの重篤な離脱症状に苦しむケースも珍しくありません。

耐性形成と依存の危険から欧米諸国では概ね2~4週間以上の処方に制限が設けられているのに対して、日本では継続処方期間の制限がなく、ベンゾジアゼピン系薬物の多剤併用も多く行われています。そのため、ベンゾジアゼピン系薬物の単位人口当たりの処方件数は、日本が世界最多である可能性が高いとさえ言われています。そして、処方実態の背景には、精神科医を含めた日本の医師におけるベンゾジアゼピン系薬物依存とその危険性に関する認識の低さが指摘されています。

そこで、当会議は、ベンゾジアゼピン系薬物の依存症や離脱症状に関する医療関係者の認識と日本における同薬物の処方実態を改善するため、2014年秋から精神科医や患者と意見交換をしながら調査と検討を重ね、この度以下を趣旨とする要望書を提出するに至りました。

<要望事項>
(1)以下を内容とする添付文書の改訂
①常用量依存症と離脱症状、多剤併用の危険性を警告欄に明記すること 
②ジアゼパムの力価との等価換算値を記載すること
③処方期間の継続に制限を設けること
(2)自己決定権保障に資する患者向け説明文書の作成・配布・ネット上での公開
(3)ベンゾジアゼピン系薬物の依存症が薬剤情報提供文書に必ず記載されるための施策
(4)ベンゾジアゼピン系薬物依存症に特化した専門医療機関の設置拡充
(5)ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する全ての医療関係者を対象とした研修の実施
(6)ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する医学部及び薬学部における教育の強化

※ 現在ベンゾジアゼピン系薬物を服用している患者又は家族の方へ
減薬又は断薬については、主治医と十分に相談しながら、慎重に判断する必要があります。
その際には、要望書本文においてご紹介した日本語版アシュトンマニュアルも参考になりますのでご参照ください。
患者が自己の判断で減薬又は断薬の判断をすることは、逆に危険ですのでくれぐれもお控え下さい。
なお、当会議は、個別の相談や医療機関の紹介依頼には対応できませんので、ご容赦くださいますようお願い致します。


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2015年10月28日

関係各企業 御中 (別表参照)
厚生労働大臣 塩崎恭久 殿
文部科学大臣 馳 浩 殿
日本睡眠学会会長 伊藤 洋 殿
日本精神神経学会理事長 武田雅俊 殿

薬害オンブズパースン会議
代表 鈴 木 利 廣
〒160-0022東京都新宿区新宿1-14-4 AMビル4F
TEL.03-3350-0607 FAX.03-5363-7080
yakugai@t3.rim.or.jp
http://www.yakugai.gr.jp

ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書

要望の趣旨

当会議は、ベンゾジアゼピン系薬物に関し、以下の点を要望します。


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1 関係各企業に対する要望

(1) ベンゾジアゼピン系薬物について、以下の点について添付文書を改訂すること
ア 常用量依存症と離脱症状、ベンゾジアゼピン系薬物同士の多剤併用の有害性を警告欄に明記すること
イ ジアゼパムの力価との等価換算値を記載すること
ウ 処方期間の継続に制限を設けること

(2) 患者の自己決定権を保障するため、当該薬剤がベンゾジアゼピン系薬物であること、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性や離脱症状、適切な離脱方法を明記した患者向け説明文書を作成して、医療機関でベンゾジアゼピン系薬物を処方された全ての患者に交付させるとともに、同説明文書をインターネット上に公開すること


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2 厚生労働省に対する要望

(1) 関係各企業に対し、上記1(1)のとおり添付文書を改訂するよう指導すること
(2) 関連各企業に対し、上記1(2)のとおり、患者の自己決定権を保障するための情報を積極的に告知するよう指導すること
(3) 薬剤情報提供文書にベンゾジアゼピン系薬物の依存症が必ず記載されるための適切な施策を講ずること
(4) 平成26年度「依存症治療拠点機関設置運営事業」において指定された全国拠点機関及び5つの依存症治療拠点機関に、ベンゾジアゼピン系薬物依存症に特化した部門を設置して専門的な治療や研究を実施させるとともに、少なくとも各県に1医療機関をベンゾジアゼピン系薬物依存の専門的治療を実施できる治療拠点機関として指定すること


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3 学会に対する要望

日本睡眠学会や日本精神神経学会は、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性と多剤併用の有害性を周知啓発するため、所属学会員のみならずそれ以外の医療関係者をも対象とした研修を実施すること


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4 文部科学省に対する要望

ベンゾジアゼピン系薬物の依存性と多剤併用の有害性について、医学部及び薬学部における教育を強化すること


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要望の理由

1 ベンゾジアゼピン系薬物の概要

(1) 定義

ベンゾジアゼピン系薬物とは、抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用を持つ薬剤である(商品名については別表参 照)[1]。日本国内で販売されている抗不安薬と催眠薬の多くがベンゾジアゼピン系薬物である。しかし、ベンゾジアゼピン系薬物を処方されている患者の多 くが、その薬がベンゾジアゼピン系薬物であることの認識がない。

ベンゾジアゼピン系薬物は、うつ病における不安・緊張・睡眠障害に適応が認められているが、抗うつ作用そのものは存在しないため、いわゆる抗うつ剤には分類されない。

(2) ベンゾジアゼピン系薬物の薬理作用など

ア 薬理作用

ベンゾジアゼピン系薬物は、一般に脳内の抑制系神経伝達物質GABAの働きを高める作用をもっており、それにより脳内の興奮性神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニンなど)の放出を減少させ、興奮を抑制するという薬理作用を有するといわれている。このような薬理作用により、不安の除去や、催眠促進作用、筋緊張の緩和作用などを発揮する。

一方で、脳内の興奮性神経伝達物質は、正常な注意力、記憶、筋緊張、協調運動、情動反応、内分泌作用、心拍数・血圧のコントロールその他多くの機能に欠かせないものである。ベンゾジアゼピン系薬物は、上記のような興奮抑制の薬理作用を有すると同時に、これらの重要な機能を損なう危険性も有している

イ 力価と代謝・排泄について

ベンゾジアゼピン系薬物の種類は非常に多く、その力価にも大きな違いがある。そのため、薬物の用量や作用の強弱を考える場合には、力価を等価換算する必要がある。高力価の薬剤を服用するほど、高用量に相当すると考えなければならない。

また、それぞれの薬剤の体内における代謝、排泄速度が異なる為、血中半減期に大きな差異があり、個人差も大きい。

ウ 耐性の発現

ベンゾジアゼピンの作用は短期間で消失し、長期的な効果は証明されていない[2]。一方、数週間あるいは、数か月間の使用により、ベンゾジアゼピンに対する耐性が生ずる[3]。ベンゾジアゼピンを慢性的に使用した場合、脳内神経細胞におけるベンゾジアゼピンが作用する部位(ベンゾジアゼピン受容体)の機能に代償的な変化が起こって感度が低下し、ベンゾジアゼピンのGABA増強作用が低下するため、興奮性神経伝達物質の活動が回復する[3]。これが「耐性」の発現である。かかる耐性の発現によって、患者は効果の持続を求めるため服用を中止することができず、時に増量が必要になり、身体的・精神的依存につながる。そして、身体的・精神的依存が形成されると、次に述べる離脱症状を生じやすくなる。


[1] 本要望書においては、エチゾラム(商品名デパス)、ゾルピデム(商品名マイスリー)、ゾピクロン(商品名アモバン)、エスゾピクロン(商品名ルネスタ)についても、ベンゾジアゼピン受容体に結合して作用する点において同様の問題を抱えているため、広義のベンゾジアゼピン系薬物として扱うこととする。
[2] COMMITTEE ON THE REVIEW OF MEDICINES;Systematic review of the benzodiazepines,Bri.Med.J. 29 MARCH.910-913 1980)
[3] BENZODIAZEPINES: HOW THEY WORK AND HOW TO WITHDRAW (The Ashton Manual)

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2 ベンゾジアゼピン系薬物の常用量依存症と離脱症状

(1) ベンゾジアゼピン系薬物による常用量依存

1960年代から、ベンゾジアゼピン系薬物を中止する際に、高用量で用いられた場合に離脱症状が生じることは報告されていた。1980年代になると、常用量(「治療用量」や「臨床用量」ともいう。)でも、長期連用されることによって依存が形成されることが報告されるようになった。

かかるベンゾジアゼピン系薬物の常用量依存は、わが国ではまだ十分に認識されておらず、実態が明らかでない点も多いとされている[4]。

(2) ベンゾジアゼピン系薬物の離脱症候群

上記のようにベンゾジアゼピン系薬物は常用量によっても依存が生じ、耐性も生じやすいため、薬剤が追加されて多剤処方となるケースも多い。そして、高用量の服用が継続された場合、突然の断薬は激しい離脱症状を生じる危険がある。

離脱症状には軽微な症状としては、不安の増強、不眠症、動悸、易刺激性、焦燥、振戦、胃腸障害、持続的な耳鳴り、不随意筋けいれん、知覚障害が挙げられている。重篤な症状としては、記憶障害、見当識障害、錯乱、幻覚、妄想、けいれん発作、離人感、運動知覚の異常などが挙げられている[5]。

なお、近年、向精神薬の過量摂取による自殺企図で救急搬送される患者の数が増加しており、こうした患者の8割近くがベンゾジアゼピン系薬物を過量摂取しているとの報告もある[6]。


[4] 長田健一ら「抗不安薬の適切な使用方法」ModernPhysician 34巻6号719-723頁(2014年)
[5] WHO Programme on Substance Abuse(1999-11)(pdf).Rational use of benzodiazepines-Document no.WHO,PSA,1996
[6] 大倉隆介他「精神科病床を持たない二次救急医療施設の救急外来における向精神薬過量服用患者の臨床的検討」日本救急医学会誌19巻901‐913頁(2008年)

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3 日本におけるベンゾジアゼピン系薬物の処方実態

(1) 単位人口あたりの消費量は世界最多の可能性

村崎らの報告によると、1998~1999年における日本のベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方件数は、欧米の6~20倍とされている[7]。

また、国際麻薬統制委員会2010年報告書において、ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬の人口1,000人あたり平均消費量について、日本はベルギーに次ぐ世界第2位と報告されている。しかし、同報告書には、日本において最も使用頻度が高いエチゾラム(商品名デパス)が、チアノジアゼピン系薬物として分類されたために算入されていない。チアノジアゼピン系薬物も、ベンゾジアゼピン受容体に結合することで作用するため、広い意味でのベンゾジアゼピン系薬物に含まれる。エチゾラムは、世界の主要国においては日本、イタリア、韓国でしか使用されていない。以上のことから、日本の単位人口当たりのベンゾジアゼピン系薬物の使用量は、世界最多である可能性が高いと指摘されている[8]。

なお、2010年に実施された「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」において、対象となった薬物関連障害症例671例のうち、鎮静剤(主としてベンゾジアゼピン系薬物)関連障害症例は119例(17.7%)存在し、1987年の調査開始以来ほぼ一貫して覚せい剤に次ぐ第2位であった有機溶剤(シンナー)を抜き、薬物関連障害の原因薬剤として第2位の位置にあることが明らかとなった[9] [10]。

(2) 継続処方制限がないため長期連用されている

主に欧米各国においては、ベンゾジアゼピン系薬物の長期連用による依存を防止するために、何らかの方法により継続処方期間に規制をかけている(2~4週間としている国が多い)。

しかし、日本においては、1回の処方における期間制限はあるものの、継続処方期間に制限が存在しないため、1回の処方期間を守る限り何年でも繰り返し処方することができてしまう。そのため、1999年に内村らが久留米大学病院精神神経科において行った調査によると、服用期間1年以上が83%、10年以上の服用も19%であったと報告されている[11]。

(3) ベンゾジアゼピン系薬物同士の多剤併用の問題点

ベンゾジアゼピン系薬物同士の併用処方には科学的根拠がなく、副作用の危険が高くなるために行うべきではないとの報告がされている[12]。また、複数のベンゾジアゼピン系薬物を併用すると、個々の薬物では上限量以下の使用であっても、全体としては上限量を超えた投与になる点に注意すべきである。

(4) 大量消費及び長期連用の背景―医療関係者の認識の低さ

上記のような諸外国と比較した場合の日本における突出した消費量、長期連用、多剤併用の背景に、ベンゾジアゼピン系薬物の副作用や常用量依存に対する医療関係者の認識の低さがあると、複数の医学文献において指摘されている[13] [14] [15]。

実際に、前掲内村らによる久留米大大学病院精神科における調査によると、36%の精神科医がベンゾジアゼピン系催眠薬の予定投与期間を考えていなかったことが報告されている。また、2010年に中島らが筑波大学付属病院において行った調査によると、全ベンゾジアゼピン系薬物処方のうち、精神科による処方は46.3%にとどまり、その他の53.7%は精神科に比べて専門性の低い一般診療科において処方されている実態が明らかにされている[16]。

英国では、ニューカッスル・アポン・タイン大学名誉教授アシュトン医師が、自らの経営するベンゾジアゼピン系薬物離脱専門クリニックの臨床と研究の中で、ベンゾジアゼピン離脱治療のための手順書である通称「アシュトンマニュアル」を作成した。同マニュアルでは、ジアゼパムのような低力価で長時間作用型の薬剤に等価換算で置換し、個々の状態に対応しながら1~2週間ごとに、あるいはそれよりもゆっくり、以前より10%減らすと言った具合に、徐々に減薬する方法が推奨されており、患者や医療関係者から高い評価を受けている。同マニュアルは、日本語を含む10か国語で翻訳され、インターネット上でも公開されている(http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf)が、日本の医師における認知度は、精神科医を含めて高くない[17]。


[7] 村崎光邦:わが国における向精神薬の現状と展望―21世紀をめざして―.臨床精神薬理,4; 3-27,2001
[8] 戸田克広「ベンゾジアゼピンによる副作用と常用量依存」臨牀精神薬理16巻6号867-878頁(2013年)
[9] http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchJHS2010.pdf
[10] 松本俊彦他「我が国における最近の鎮静剤(主としてベンゾジアゼピン系薬物)関連障害の実態と臨床的特徴―覚せい剤関連障害との比較―」精神神経学雑誌113巻12号1184‐1198頁(2011年)
[11] 内村直尚ら「睡眠薬の臨床用量依存をどうみる」臨牀精神薬理9巻10号(2003年)
[12] 田島治「抗不安薬併用の問題」Modern physician24巻1027-1030頁(2004年)
[13] 前掲戸田克広「ベンゾジアゼピンによる副作用と常用量依存」臨牀精神薬理16巻6号867-878頁(2013年)
[14] 松本俊彦「不安障害の薬物療法と新たな治療薬依存」精神科治療学28巻4号463-470頁(2013年)
[15] 田島治「ベンゾジアゼピン系薬物の処方を再考する」臨牀精神医学30巻9号1005-1009頁(2001年)
[16] 中島正人ら「ベンゾジアゼピン系薬剤の処方実態調査」医療薬学36巻12号863-867(2010年)
[17] 別府宏圀「アシュトン・マニュアル日本語版の誕生」TIP正しい治療と薬の情報26巻12号177-180頁(2011年)


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4 要望の趣旨について

(1) 医療関係者の認識を改善する必要性

上記のとおり、日本における突出した消費量、長期連用や多剤併用の処方実態の背景には、依存症や離脱症状に関する医療関係者の認識の低さが影響している。そのような医療関係者の認識の低さを改善するためには、以下の施策が必要である。

ア 添付文書の改訂(要望の趣旨1(1)、要望の趣旨2(1))

医療関係者に向けて作成されている添付文書において、ベンゾジアゼピンの依存症と離脱症状についてこれまで以上に警告する必要がある。

代表的なベンゾジアゼピン系薬物であるジアゼパム(商品名セルシン)の添付文書には、重大な副作用欄において「大量連用により、薬物依存を生じることがある」「大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないしは投与の中止により・・・離脱症状があらわれることがある」(傍点追加)と記載されているのみで、常用量でも依存が生じうる旨の記載すらない。

そこで、日本におけるベンゾジアゼピン系薬物の添付文書を改訂し、依存症と離脱症状について、重大な副作用欄ではなく警告欄に明記する必要がある。

また、前述のとおり、ベンゾジアゼピン系薬物の種類は非常に多く、その力価にも大きな違いがあるため、薬物の用量や作用の強弱を考える場合には、力価を等価換算する必要がある。そのため、医師向けに作成された添付文書に、ジアゼパムの力価との等価換算値を記載する必要がある。

さらに、諸外国のように、ベンゾジアゼピン系薬物の長期継続処方に対して、何らかの処方期間制限を設ける必要がある。

イ 関連学会主導の研修の必要性(要望の趣旨3)

ベンゾジアゼピン系薬物の依存症に対する医療関係者の認識は低く、しかも専門性の低い一般診療科において多く処方されている実態に対処するためには、関連学会の主導のもとで、所属学会員のみならず、それ以外の医療関係者をも対象とした研修を実施することが必要である。

ウ 医学部及び薬学部教育強化の必要性(要望の趣旨4)

依存性や多剤併用の危険性についての医師の認識の低さは、これまでの医学及び薬学教育においてベンゾジアゼピン系薬物について正しい知識が教えられてこなかったことの影響も否定できない。また、現在の医療関係者の認識改善に向けた取り組みだけでは、処方実態を抜本的に変えることは困難である。

そこで、将来の医療関係者に対して正しい認識を普及するため、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性、多剤併用の危険性や離脱方法に関する医学部及び薬学部における教育を強化する必要がある。

(2) 患者に対する説明充実の必要性

ア 患者向け説明文書の必要性(要望の趣旨1(2)、要望の趣旨2(2))

多くの患者は、依存や離脱症状の危険性について十分な説明を受けないままベンゾジアゼピン系薬物の処方を受け、また当該薬剤がベンゾジアゼピン系薬物であることすら知らないまま、自己決定の機会を奪われているのが実態である。

そこで、患者の自己決定権を保障するため、当該薬剤がベンゾジアゼピン系薬物であること、ベンゾジアゼピン系薬物の依存性や離脱症状の危険性、適切な離脱方法を明記した患者向け説明文書を作成し、医療機関でベンゾジアゼピン薬剤の処方を受ける全ての患者に交付させるとともに、インターネット上で同説明文書を公開させる必要がある。

イ 薬剤服用歴管理指導の必要性(要望の趣旨2(3))

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第15条の12第2項は、薬剤情報提供文書に「当該薬剤に係る使用上の注意のうち、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項」(5号)、「その他当該薬剤を調剤した薬剤師がその適正な使用のために必要と判断する事項」(6号)の記載を求めている。

ベンゾジアゼピン系薬物の依存の可能性が、上記規則第15条の12第2項5号又は6号に該当する事項であることは明らかである。

そこで、厚労省は、薬剤情報提供文書にベンゾジアゼピン系薬物の依存症が必ず記載されるよう、適切な施策を講ずべきである。

(3) 専門医療機関整備の必要性(要望の趣旨2(4))

ベンゾジアゼピン系薬物を大量かつ長期連用されており、その離脱症状に苦しんでいる患者が多数存在するにもかかわらず、日本においてその離脱を専門とする医療機関は、当会議の知る限りにおいて存在しない。

また、平成26年度「依存症治療拠点機関設置運営事業」において指定された全国拠点機関である久里浜医療センターには、アルコール依存、ネット依存、ギャンブル依存に関する特設部門は存在するものの、ベンゾジアゼピン系薬物を含む向精神薬依存に関する特設部門は存在しない。

そこで、全国拠点病院及び依存症治療拠点機関の中に、ベンゾジアゼピン系薬物を含む向精神薬依存症に関する特設部門を設置するとともに、少なくとも各都道府県に1つは依存症治療拠点機関を指定することによって、ベンゾジアゼピン系薬物離脱症状に苦しむ多数の患者が、専門的かつ効果的な治療を受けることができる治療体制を整備する必要がある。

以上


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※ 現在ベンゾジアゼピン系薬物を服用している患者又は家族の方へ
減薬又は断薬については、主治医と十分に相談しながら、慎重に判断する必要があります。
その際、本書本文で紹介した日本語版アシュトンマニュアルも参考になります。
患者が自己の判断で減薬又は断薬の判断をすることは、逆に危険ですのでくれぐれもお控え下さい。
なお、当会議は、個別の相談や医療機関の紹介依頼には対応できませんので、ご容赦くださいますようお願い致します。


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「要望の理由」の3(1)について、私個人の意見

「要望の理由」の3(1)は、精神科がある全国の病院を対象に、薬物関連障害の調査に言及しており、2014年7月22日の朝日新聞の記事でも同じように発表されていました(私のストーリーも同記事で紹介されていました)。

しかし、下記の通り、この調査は大きな欠点があり、実態を示すという目的を果たしていないと思われます。

調査の欠点

  1. 上記調査は、精神科医療施設に限られています。しかし、ベンゾは精神科がない病院でも、精神科以外の医療科でも、多くのクリニックでも、幅広く処方されている(こういった所は調査には含まれていません)。
  2. 多くの医師はベンゾ系薬剤については無知であり、依存症の診断をする能力のある医師はまれです。その結果、医師の処方によってもたらされるベンゾ依存症の多くは報告されていない筈だということです。
  3. 自分が飲んでいる薬はベンゾであるということを知っている患者は殆どいないです。また、依存症に陥っても、自分が依存症に罹患されていることを自覚する患者は殆どないです(体調は悪化していることはわかっているだろうが、なぜ悪化しているのかは判っていない。多くの場合、医師は依存症を誤診してしまっている)。その結果、前述のとおり、医師の処方によってもたらされるベンゾ依存症の多くは報告されていない筈だということです。

ご参照ください。

ベンゾはヘロインより依存しやすいであろうと専門家は言います。また、上記のとおり、日本の単位人口当たりのベンゾジアゼピン系薬物の使用量は、世界最多と考えられている。

もしちゃんとした検査・診断と共にベンゾなどの向精神薬を処方内服されている全国民を対象に、徹底的かつ全面な調査が実施された場合は、医原性依存症は、どの違法薬による依存症も大幅に上回ると私は確信しています。

こちらもご参照ください。


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アンドルー・バーン

「ベンゾジアゼピンを飲むと災難がやって来る。」

アンドルー・バーン医師
オーストラリア, NSW, レッドファーン
ベンゾジアゼピン依存 (1997)

ジョン・マースデン

「もし何かの薬を飲み続け、それが長い長い災難をもたらし、あなたからアイデンティティをまさに奪い去ろうとしているのなら、その薬はベンゾジアゼピンに違いない。」

ジョン・マースデン医師
ロンドン大学精神医学研究所
2007年11月1日

フィリップ・ウーラス

「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」

フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)

ヴァーノン・コールマン

「ベンゾジアゼピン系薬剤はおそらく、これまでで最も中毒性の高い薬物であろう。これらの薬を大量に処方してきた途方もなく大勢の熱狂的な医師達が、世界最大の薬物中毒問題を引き起こしてきたのだ。」

ヴァーノン・コールマン医師

薬という神話 (1992)

デイヴィッド・ブランケット

ブランケット下院議員、ベンゾジアゼピンについて語る。

「これは国家的スキャンダルである!」

デイヴィッド・ブランケット(英国下院議員)
1994年2月24日

ジェレミー・ローランス

「薬があれば、製薬会社はそれを使える病気を見つける。」

ジェレミー・ローランス (ジャーナリスト)
インディペンデント紙 (2002年4月17日)

マーシャ・エンジェル

「製薬会社に対して、彼らの製造する薬について公正な評価を期待することは、ビール会社にアルコール依存に関する教えを期待するのと同じようなものである。」

マーシャ・エンジェル医師
医学専門誌"New England Journal of Medicine"元編集長

マルコム・レイダー

「ベンゾジアゼピンから離脱させることは、ヘロインから離脱させるよりも困難である。」

マルコム・レイダー教授
ロンドン大学精神医学研究所
BBC Radio 4, Face The Facts
1999年3月16日

ヘザー・アシュトン

「長期服用者のうち15%の人たちに、離脱症状が数ヶ月あるいは数年持続することがある。中には、慢性使用の結果、長期に及ぶ障害が引き起こされる場合もあり、これは永続的な障害である可能性がある。」

ヘザー・アシュトン教授
医学博士、名誉教授
Good Housekeeping (2003年)

スティーヴィー・ニックス

「クロノピン(クロナゼパム)とは恐ろしい、危険なドラッグだ。」

スティーヴィー・ニックス(歌手)

ポール・ボーテン

この気の毒な問題に取り組む全ての関係者は、トランキライザー被害者の為に正義を提供するよう努めるべきである。

ポール・ボーテン(英国下院議員), 1994年

マーシン・スライズ

'benzo.org.uk'というサイトは実に素晴らしい。」

マーシン・スライズ
ロシュ社ポーランド 製品マネージャー

The Ashton Manual

アシュトンマニュアル:世界的な専門家、ヘザー・アシュトン教授によって書かれた、ベンゾジアゼピン系薬剤と離脱法についての解説書。

このマニュアル内で示された離脱スケジュールは単に“一般的な指針”を示すために作成されたものであることを、あなたの処方医に伝えることが大切です。離脱の経験は人それぞれで、同じものがない。離脱の経過は多くのファクター(要因)に影響されるからです。

マニュアルを読む

ジアゼパム換算量計算の違い

Ever wonder why the diazepam conversion rates differ from source to source?

中毒性薬剤専門医のジャドスン医師は次のように説明します。

「ジアゼパム換算量を計算するために用いられる換算率は情報源によって異なる傾向がある。これは“換算”用量に対する臨床反応の個人差がさまざまであるためで、あるベンゾジアゼピンからその他に換算する際、代替の薬剤に対する患者の反応の注意深いモニタリングが必要である。」

ドキュメンタリー動画

興味を持っていただけそうなベンゾジアゼピン関連のニュース動画をいくつか紹介しています。

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