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第Ⅰ章(後半)

ベンゾジアゼピン系薬剤: 体内でどう作用するか

ベンゾジアゼピンの有害作用*

〔*訳注:「有害作用」とは、薬を常用量で用いたときに現れる好ましくない作用。以前は「副作用」という用語が広く使われていたが、現在は「有害作用」が正式な用語。〕

過鎮静

過鎮静とはベンゾジアゼピンの鎮静/睡眠作用の効き過ぎであり、用量に関係してきます。その症状としては、傾眠、集中力低下、協調運動障害、筋脱力、めまい、精神錯乱などがあります。ベンゾジアゼピンを睡眠薬として夜に摂取した際、特に長時間作用型の場合に“持ち越し効果(hangover)”として翌日にも鎮静作用が持続することがあります(表1)。しかしながら、一般に鎮静作用は1、2週間で耐性が形成されます。ベンゾジアゼピンを日中服用している不安症の患者が眠気を訴えることは滅多にありませんが、正確な判断力や記憶機能の一部は依然として損なわれたままの可能性はあります。

高齢者では、過鎮静がより長時間持続し、より顕著になり、転倒や骨折の原因となることがあります。高齢者においては、少量のベンゾジアゼピン使用であっても、急性錯乱状態を呈することがあります。ベンゾジアゼピンによる過鎮静は家庭内や仕事中の事故の原因になります。多くの国の研究により、ベンゾジアゼピン使用と重大な交通事故の危険性との間には深い関連性が示されています。ベンゾジアゼピンを服用している人は、車の運転や機械の操作の際の危険性について注意を与えられなければいけません。


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薬剤間の相互作用

ベンゾジアゼピンは鎮静作用を持つ他の薬剤と併用することにより、相加的作用を発揮します。その薬剤には、他の睡眠薬、いくつかの抗うつ薬(例:アミトリプチン[トリプタノール]、ドキセピン[本邦未承認])、メジャートランキライザーあるいは神経遮断薬(例:プロクロルペラジン[ノバミン]、トリフロペラジン[トリフロペラジン糖衣錠])、抗痙攣薬(例:フェノバルビタール、フェニトイン[アレビアチン]、カルバマゼピン[テグレトール])、鎮静性抗ヒスタミン薬(例:ジフェンヒドラミン[レスタミン]、プロメタジン[ピレチア])、阿片(ヘロイン、モルヒネ)などがあります。そしてアルコールも重要です。ベンゾジアゼピンを服用している患者はこのような相互作用について注意を与えられなければいけません。鎮静系薬剤が過量服薬された場合、ベンゾジアゼピンは致死リスクを上昇させます。


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記憶障害

長らく、ベンゾジアゼピンは健忘症を引き起こすことが知られてきました。この作用を活用し、大きな手術前あるいは軽い外科手術処置の術前投与薬として使用されます。このような状況では、不快なイベントの記憶を消失させることは有難い作用です。この目的で、かなりの高用量が単回で用いられ、短時間作用型のベンゾジアゼピン(例:ミダゾラム)が静脈注射されることがあります。

不眠や不安に用いられる用量でのベンゾジアゼピンの経口使用であっても、記憶障害をもたらすことがあります。集中力、注意力不足がひとつの原因となって、新たな情報の取得が不十分になります。更にこの薬剤は、“エピソード”記憶の特異的な欠損を引き起こします。最近の出来事、それが起きた時の状況、そして時間経過を思い出すことが出来なくなるのです。反対に、他の記憶機能(言葉の記憶力、数秒間で電話番号を記憶する能力、長期記憶の想起力)は損なわれません。エピソード記憶の障害は、場合によると、ど忘れや“一過性記憶喪失”をもたらすこともあります。いくつかの事例では、このような記憶の欠落が、万引きのようなおかしな行動の原因になっているかもしれないと言われています。

ベンゾジアゼピンはしばしば急性ストレス反応にも処方されます。そのような時には、破滅的な災難による苦痛を軽減させるかもしれません。しかし、数日以上使用されると、そのような精神的外傷に対する正常な心理的適応を妨げることがあります。喪失や死別に直面した時、ベンゾジアゼピンは悲嘆のプロセスを妨げ、何年も解決しないまま放置することがあります。パニック障害や広場恐怖など他の不安症状についても、ベンゾジアゼピンは認知行動療法など他に代替となるストレス対処法の学習を妨げることもあるのです。


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逆説的興奮作用

ベンゾジアゼピンは時に、不安、不眠、悪夢、入眠時幻覚、易怒性、過活動的行動、攻撃的行動などを増大させ、てんかん患者では痙攣発作を増悪させるなど、本来期待される作用とは反対の逆説的興奮を引き起こすことがあります。激しい暴行(殺人に至ることさえある)など、発作的な激怒や暴力行為が、特に静脈内投与後に報告されていますが、経口投与後でもみられます。それほど激しくもない事例で、易怒性が増大したり、論争好きになったりすることは非常によくあることで、患者自身や家族からもしばしば報告されます。このような反応はアルコールによって引き起こされるものと似ています。不安傾向の強い人、攻撃的な人、子供、高齢者に最も顕著に見られます。それらは、普段は社会的制約によって抑え込まれた行動傾向が解放されたことによるものでしょう。“幼児虐待”、妻への暴力、“高齢者虐待”においても、ベンゾジアゼピンが原因となっているケースがあります。


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抑うつ、感情鈍麻

ベンゾジアゼピン長期使用者は、アルコール依存者やバルビツレート依存患者と同様に、抑うつ状態にあることがよくあり、その抑うつは長期服薬中に初めて現れてくることがあります。ベンゾジアゼピンは抑うつを発症させることも、悪化させることもあります。脳内のセロトニンやノルエピネフリン(ノルアドレナリン)などの神経伝達物質の産生を減少させることが原因となっている可能性があります。しかしながら、不安と抑うつは同時に発症していることがよくあり、ベンゾジアゼピンは、しばしば不安と抑うつが混合した状態に処方されます。時に薬は、そのような患者の自殺傾向を強めることがあるようです。私の離脱クリニックに通院していた最初の50人の患者のうち(1987年の報告)、10人が慢性的なベンゾジアゼピン薬物療法を受けている間に、過量服薬して入院が必要となっていました。彼らのうち、ベンゾジアゼピン服薬前にうつ病歴があったのは2人だけです。ベンゾジアゼピンから離脱後、彼らの抑うつ症状は改善し、離脱後10ヶ月から3年半のフォローアップ期間中に、更に過量服薬した患者はいませんでした。1988年、英国医薬品安全委員会は「ベンゾジアゼピンは抑うつあるいは抑うつに関係する不安の治療に単独で用いるべきではない。そのような患者においては自殺を引き起こすことがある」という勧告を出しました。

喜びや苦痛を感じなくなる“感情麻痺”は、ベンゾジアゼピン長期使用者がよく訴える症状です。このような感情鈍麻は、おそらく脳内の感情をつかさどる中枢の活動に対する、ベンゾジアゼピンの抑制作用が関係しているからでしょう。以前にベンゾジアゼピンを長期使用していた人が、服薬期間中、子供、配偶者、パートナーなど、家族への感情表現が欠けていたことを苦々しく悔いることがよくあります。ベンゾジアゼピンの慢性服用は、家庭内不和の原因になり、破婚さえ引き起こすこともあるのです。


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高齢者における有害作用

高齢になればなるほど、若い人よりもベンゾジアゼピンの中枢神経抑制作用に対する感受性が高まってきます。ベンゾジアゼピンは高齢者に、錯乱、夜の徘徊、健忘症、運動失調(バランス失調)、持ち越し作用、“偽性認知症”(時にはアルツハイマー病と誤診)などを引き起こすので、可能な限り服用は避けなければいけません。高齢者において、ベンゾジアゼピンへの過敏性が増大する理由のひとつは、若者より薬の代謝効率が低いからです。したがって、薬の作用が長引き、通常の使用でも薬剤の蓄積が簡単に起こります。しかしながら、たとえ同じ血中濃度であっても、ベンゾジアゼピンの抑制作用は高齢者に強く出ます。それはおそらく、高齢者は若者より脳細胞が少なく、脳の予備能が小さいからでしょう。

これらの理由から、一般に、ベンゾジアゼピンを高齢者に用いる場合、用量は成人推奨用量の半分にすべきで、使用期間も(成人と同じく)短期間(2週間)に限定すべきだと勧告されています。更には、活性代謝物を生じないベンゾジアゼピン(例:オキサゼパム[本邦未承認]、テマゼパム[本邦未承認])の方が、ゆっくりと排泄される代謝物のあるベンゾジアゼピン(例:クロルジアゼポキシド[コントール、バランス]、ニトラゼパム[ベンザリン、ネルボン])よりも忍容性は良好です。個々のベンゾジアゼピンの等価換算値は、成人も高齢者も大よそ同じです(表1)。


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妊婦における有害作用

ベンゾジアゼピンは胎盤を通過するため、妊娠後期の母親が常用した場合、例え通常の治療用量であっても、新生児に合併症を引き起こすことがあります。胎児や新生児はベンゾジアゼピンの代謝が非常に遅く、出産後2週間まで乳児にはかなりの蓄積が持続することがあります。その結果、筋肉が弛緩する“筋緊張低下児症候群”、過鎮静、授乳困難が引き起こされます。約2週間経過後、過興奮、甲高い泣き声(俗に言う“疳の虫”)、摂食困難などの離脱症状を発症する場合があります。

治療用量のベンゾジアゼピンでは、大きな先天的形成異常を引き起こすリスクはほとんどないようです。しかしながら、母親の常習的な服用により、胎児の子宮内での成長が阻害され、脳の発達を遅延させることがあります。このような子供達が、後に、注意欠陥障害、多動、学習障害、自閉症性障害スペクトラムなどになりやすい可能性があるとの危惧が高まっています。


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耐 性

常用することで、ベンゾジアゼピンの作用の多くに対して耐性が形成されます。つまり、当初の服薬量は次第に効果が薄れ、当初の効果を得るためにはより高用量が必要とされます。これにより、医師が処方量を増やしたり、別のベンゾジアゼピンを追加したりすることがしばしばあり、結果的に一度に2種類のベンゾジアゼピンを使用することになる患者も中にはいます。

しかしながら、ベンゾジアゼピンの様々な作用に対する耐性は、出現の早さも程度も様々です。睡眠作用への耐性形成は早く、睡眠検査によると、深い眠り(徐波睡眠)や夢(ベンゾジアゼピンによって最初に抑制される)を含む睡眠パターンは、数週間のベンゾジアゼピン連用後には、治療前レベルに戻ります。同様に、不安に対して日中服用している患者は、数日間の服用で、もう眠気を感じなくなります。

抗不安作用に対する耐性はよりゆっくりと形成されますが、ベンゾジアゼピンが数ヶ月を超えて効果を持続させるというエビデンスはほとんど存在しません。実際は、ベンゾジアゼピンの長期使用により不安障害を悪化させることさえあります。多くの患者が、ベンゾジアゼピンを継続的に服用しているにも拘わらず、年々不安症状が徐々に増大していくことや、パニック発作や広場恐怖が数年に亘る慢性服用後に初めて発症しうることに気付きます。長期服用中に起きるこのような症状の悪化は、おそらく抗不安作用に対する耐性の形成によるものでしょう。そのため、薬剤が継続的に投与されている時でさえ“離脱症状”が出現します。しかしながら、耐性が完全ではないこともあり、持続的な有効性を報告する慢性服用者もいます。その理由は、部分的には、離脱現象の抑制によるものでしょう。それでもほとんどの場合、ベンゾジアゼピンの漸減(ぜんげん)、離脱の成功後、これらの症状は徐々に消失していきます。私のクリニックに通った最初の50人の患者のうち10人が、ベンゾジアゼピン使用中に初めて広場恐怖症になっていました。広場恐怖の症状は、家に引きこもっていた患者でさえも、離脱後一年以内に劇的に軽減しました。そして、フォローアップ期間(離脱後10ヶ月から3年半)に、広場恐怖症で生活に支障がある人は誰もいませんでした。

ベンゾジアゼピンの抗痙攣作用に対する耐性により、一般に、癲癇(てんかん)の長期管理には適していません。ベンゾジアゼピンの運動機能への作用に対する耐性は相当な程度にまで形成されうるため、かなりの高用量を服用している人でも、自転車に乗れたり球技が出来たりすることがあります。しかしながら、記憶力、認知力への作用に対する耐性は完全に形成されることはないようです。慢性服用者におけるこれらの機能は損なわれたままであり、離脱後徐々に回復しては行くものの、しばしば不完全であることが、多くの研究によって示されています。

耐性は、慢性使用される多くの薬剤(アルコール、ヘロイン、モルヒネ、大麻を含む)に形成される現象です。身体は継続的な薬剤の介在に反応し、薬の作用に打ち勝とうと一連の調整を行います。ベンゾジアゼピンの場合、GABA受容体およびベンゾジアゼピン受容体に代償的な変化が起こり、感度が低下してGABA とベンゾジアゼピンの抑制作用が減弱します。同時に、GABAによってコントロールされていた二次系統に変化が起こり、興奮性神経伝達物質の活動が回復されるようになります。ベンゾジアゼピンの様々な作用への耐性は、個体間で差異があります。それはおそらく、パーソナリティ特性やストレスに対する感受性に反映されている、内因性(固有)の神経学的、化学的性質の違いによるものでしょう。耐性の形成が、人がベンゾジアゼピンに依存するひとつの理由であり、次章で述べる離脱症候群への準備段階にもなるのです。


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依 存

ベンゾジアゼピンは依存性のある薬剤です。精神依存、身体依存が数週間あるいは数ヶ月の常用、連用で形成されます。ベンゾジアゼピン依存には、以下のように互いに重なり合う複数のタイプがあります。

治療用量依存(または、常用量依存) 治療用量のベンゾジアゼピンで依存症になった人は、通常、以下のような特徴のうち、いくつかに当てはまります。

  1. 処方された“治療用量”(一般に低用量)を数ヶ月あるいは数年間服用している。
  1. 通常の日常的な活動をこなすために、ベンゾジアゼピンを徐々に“必要”とするようになってきた。
  1. 処方当初の適応症が消失したにも拘わらず、ベンゾジアゼピンを使用し続けている。
  1. 離脱症状のために、減薬・断薬に困難がある。
  1. 短時間作用型のベンゾジアゼピン(表1)を服用の場合、次回の服薬までの間に不安症状が出現するか、あるいは次の服薬を早めたいとの渇望がある。
  1. 処方薬を繰り返し入手するために、定期的に医師のもとを訪れる。
  1. 次の処方薬がすぐに入手できない場合、不安になる。薬を自分の身辺に携帯し、ストレスが予想される出来事の前や、慣れないベッドで寝る前に追加服薬することがある。
  1. 当初の処方以来、用量が増加している。
  1. ベンゾジアゼピンを服用し続けているにも拘わらず、不安症状、パニック、広場恐怖、不眠、抑うつ、身体症状の増加がある。

世界中で、ベンゾジアゼピンの処方を受け、服用している人々の数は膨大です。例えば米国では、1990年に実施された大規模調査で、11%近くの人が、前年に何らかのベンゾジアゼピン系薬を使用したと報告しています。米国の成人人口のうち約2パーセント(およそ400万人)が処方薬のベンゾジアゼピンを睡眠薬あるいは安定剤として、定期的に5年から10年、あるいはそれ以上服用していたようです。同様の数字が英国、ほとんどの欧州各国、いくつかのアジア諸国にも当てはまります。これらの長期服用者のうち、かなりの割合の人が、少なくともある程度は依存しているはずです。正確な人数は明らかではありません。依存をどう定義するかで、その人数はある程度変わってきます。しかしながら多くの研究において、長期服用者のうち50~100%の人が、離脱症状のためにベンゾジアゼピンを止める事に困難を生じていることが示されています。離脱症状については第Ⅲ章で説明します。

高用量処方による依存 処方薬としてベンゾジアゼピンを服薬しはじめた患者のうち少数の人は、次第に高用量を“要求”するようになります。最初は処方量を増やすよう医師を説得しますが、医師の処方量上限に達すると、自ら処方するための更なる補充分を得るために、複数の医師あるいは診療科を訪れることがあります。時には、このグループの患者たちは、ベンゾジアゼピンを過剰なアルコールと一緒に摂るという誤用をします。彼らは、不安、抑うつが高度で、パーソナリティに問題がある傾向にあります。彼らには他の鎮静薬やアルコールの誤用歴があるかもしれません。彼らは通常、違法ドラッグは使用しませんが、入手先がない場合、“路上で”ベンゾジアゼピンを入手することもあります。

ベンゾジアゼピンの悦楽的乱用 ベンゾジアゼピンの悦楽的使用は深刻化しつつある問題です。世界中の多剤乱用者のうち、かなりの割合(30~90%)の人がまた、ベンゾジアゼピンを使用しています。この状況では、ベンゾジアゼピンは違法ドラッグ(特に阿片)の“kick(興奮)”を強めたり、他の乱用薬物(阿片、バルビツール酸、コカイン、アンフェタミン、アルコール)の離脱症状を軽減させたりする目的で使用されます。時には、脱アルコール中毒治療中にベンゾジアゼピンを投与された患者がベンゾジアゼピンの依存症になることがあり、その後、アルコールに逆戻りするとともに、違法入手したベンゾジアゼピンを乱用する例もあります。時には、“ハイ”になるために高用量のベンゾジアゼピンが単独で使用されます。

様々な国で、ジアゼパム、アルプラゾラム、ロラゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、フルニトラゼパム等の悦楽的使用が報告されています。通常、薬は経口摂取され、しばしば治療用量よりもはるかに高用量(例:ジアゼパム一日100 mgまたはその等価量)なことがあります。しかし、ベンゾジアゼピンを静脈内に注射して使用する人も中にはいます。このような高用量使用者には、ベンゾジアゼピンへの耐性が高レベルで形成されます。間欠的に服薬しているにも拘わらず、彼らの中には依存症になる人がいます。これらの患者の解毒は、離脱反応が激しく、痙攣を起こすこともあるため、困難なものになります。

目下の悦楽的使用者の人口は比較的少ないかもしれません。おそらく、治療用量処方の長期服用者人口の10分の1くらいでしょう。しかし、米国や西欧ではおそらく数十万人にのぼり、さらに増加しているようです。ベンゾジアゼピンの過剰処方が各家庭での備蓄をもたらし、それがベンゾジアゼピンの入手を容易にして、そして疑う余地もなく、非合法的な薬物乱用の領域への流入を助長していることは強く反省されなければいけません。現在、違法使用者がベンゾジアゼピンの入手源としているのは、偽造処方箋や薬局からの窃盗、違法輸入などによるものです。


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ベンゾジアゼピン長期使用による社会経済コスト

数値化することは難しいですが、現在の高レベルのベンゾジアゼピン長期使用による社会経済コストは相当なものです。これらのほとんどについては上述したとおりであり、表3にまとめられています。このような結果は、ベンゾジアゼピン長期処方を減少させれば、最小化することができるでしょう。それにも拘わらず、多くの医師がベンゾジアゼピンを処方し続け、離脱を希望する患者は、どう取り組むべきかについてアドバイスやサポートをほとんど受けることはありません。次章で、離脱についての実践的情報を提供します。それが、ベンゾジアゼピン長期使用者、および彼らの医師にとって有効なものとなることが望まれます。

表3. ベンゾジアゼピン長期使用による社会経済コスト

  1. 事故(交通、家庭内、仕事中)リスクの増大
  1. 他の薬剤と併用して過量服薬した場合の致死リスクの増大
  1. 自殺企図のリスク増大(特に抑うつ患者で)
  1. 攻撃的行動や暴行のリスク増大
  1. 万引きなどの反社会的行動リスクの増大
  1. 感情障害や認知障害による夫婦間・家庭内不和や崩壊
  1. 病気による失業、失職、作業損失
  1. 医療機関での検査、診断、入院コスト
  1. 妊婦や新生児への有害作用
  1. 依存および乱用の可能性(治療目的または悦楽目的)
  1. 薬剤処方コスト
  1. 訴訟コスト

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参考文献

  • Ashton, H. Benzodiazepine Abuse, Drugs and Dependence, Harwood Academic Publishers (2002), 197-212, Routledge, London & New York.

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