English
日本語

 

控訴審判決の不当性(A)

控訴審判決は、上告人がベンゾジアゼピン依存症になったか否かに関し、以下の点に誤りがある。

2.2.1 DSM-IV-TR 依存症診断基準の適用が誤解された

判決書の5頁のとおり「DSM-Ⅳ-TRの物質依存の基準の適用例として挙げられている物質はコカイン、アルコール、喫煙であるから、治療のために標準的に用いられる薬物に上記基準を機械的に当てはめてすることはできない」と相手側が主張しているが、実は、ベンゾジアゼピンを含む処方による薬物も DSM-Ⅳ-TR 診断基準に当てはまる。

ベンゾジアゼピンを含む処方による薬物も DSM-Ⅳ-TR 診断基準に当てはまる事実については、ジャドスン専門医は次のように述べている。

 「DSM IV TRは精神障害を診断するために用いられている事をここで確認して置く。承認されている精神障害の中、薬物による精神障害も該当し、これが処方薬による障害にも当たる。ベンゾジアゼピン依存症も含まれている」(別紙①の2)。

ジャドスン専門医は、第1意見書にて次のように述べている。「ベンゾジアゼピン依存症の診断をするために,当アルコール・薬物科では,DSM-IV TRを用いている。DSM-IV TRは,アメリカ精神医学会によって使用される基準である。

DSM-IV TRにおいて記載されている通り,薬物依存症[訳注:「物質依存」と同義。]とは,臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こす物質使用の不適応的な様式で,[7つの診断基準の内:訳注]3つ(またはそれ以上)の基準が,同じ12か月の期間内のどこかで起こることによって示される(訳注:甲B7の197頁参照。物質依存と診断するための7つの基準が掲げられている。)。

ウェインの場合,臨床的障害としては,肉体的症状と精神的症状の双方が有った。この臨床的障害と連関するものとして,同人が仕事で職分を全うすることができないことを含む,同人の生活に対する打撃が有った」 (甲A23-ジャドスン医師第1意見書2.1.3事項)。

「7つの基準のうち、ウェインは1,2,4,6,7に該当した。換言すれば,依存症であると診断するためには,7つの基準のうち3つの基準に該当しさえすれば足りるところ,5つの基準に該当したのである」(甲A23-ジャドスン医師第1意見書2.3事項)。

さらに、「DSM-IV TRによる診断を補うべく,ウェイン(上告人)の臨床像につき,ICD-10に依拠した診断をも併せ行った。ICD-10は,物質依存[薬物依存症]を診断するのにヨーロッパにおいて,より一般的に使用されている(甲A23-ジャドスン医師第1意見書2.1.3事項)。


ページトップに戻る

注 記

  • With the benefit of hindsight, maybe I should have appealed (more clearly than I did), not only the fact the High Court never addressed 3 of the DSM-IV-TR criteria (leaving them standing), but also the fact only 3 criteria need to be met to determine a dependency diagnosis.
  • This may not have made any difference at the Supreme Court level, but in terms of the DSM-IV-TR, it would mean the High Court made a clear technical failure in ruling out my dependency.

 

 

2.2.2 DSM-IV-TR 依存症診断基準該当の解釈が誤っている

判決書の内容を見ると、第2審では上告人が充足した基準(1.耐性、2.離脱症候、4.制御不能、6.生活への打撃、7.有害であることを知っているにもかかわらず使用を継続したこと)の全てが分析に入れて配慮されていない事が明白である。

上記の1.耐性と2.離脱症候しか配慮せずに判決の内容が決められている。しかし、「これらの基準を適用する際に気を留めるべきことは、これは各基準を一つずつ検討するような単純なケースではないということだ。むしろ全体的臨床像の中で、それぞれの基準の関係を考慮しながら検討されるべきである」(甲A35-ジャドスン医師第3意見書1.2.2事項)。

更に、第2審の判決では、上記の1.耐性と2.離脱症候における証拠の一部一部のみがピックアップされ、適当に組み合わせられた結果、不公正な判断に至っている。

しかし、「DR・ウェスン、DE・スミスとW・リングがベンゾジアゼピン中毒、他、鎮静睡眠薬中毒に関する講義(「中毒医学の諸原理」第3版)において強調した通り、診断基準(DSM IV TR)を使いこなすには、問題全体につき(中毒性薬剤専門医による)熟考した洞察と判断を要する」(甲A23-ジャドスン医師第1意見書2.1.1事項)。

更に、ジャドスン医師の証人尋問が採用されなかった為、法廷では、中毒性薬剤専門医として、その熟考した洞察と判断を発揮・披露する機会はなかった。

本件の関係者の中では、その洞察と判断ができる能力を有するのはジャドスン医師(中毒性薬剤専門医)しかいない。同医師が専門的訓練を受け、中毒性薬剤専門医としての豊富な経験があり、資格もあるからである。

注:その結果、本件では、中毒性薬剤専門医による証人・鑑定人尋問は一切採用されなかった為、証拠の解釈については、資格のない者が勝手に解釈できる状態に至っている。しかし、実は、証人・鑑定人尋問は採用されなかったにも関わらず、ジャドスン専門医による各意見書は、証拠(各カルテ)を基づいて問題全体につき、必要な洞察と判断を十分に発揮している。

これを確認するために、第2審の判決が下された後、上告人は DSM-Ⅳ-TR 基準の(1)耐性、(2)離脱症候を充足したか否かについては、アシュトン教授に直接に専門意見を尋ねることにした(ベンゾジアゼピン依存症についてはアシュトン教授が世界中で最も能力のある専門家である)。

ジャドスン医師の意見書(甲A23-第1意見書1.4事項、甲A35-第3意見書2.1~2.2事項)に載っている病歴・症状(ベンゾジアゼピン服用前、服用中、また漸減療法の時)をそのまま同教授に送った。

注:ジャドスン医師の各意見書の内容は、提出済みの証拠(各カルテ)を基づいているものである事実を理解する必要がある(別紙⑦:甲A35-ジャドスン医師第3意見書3.4事項)。

また、元甲A26号証は、現甲A37の1~3号証になっている。

アシュトン教授は、上告人の病歴・症状を分析したところ、次のように意見を述べた:「ベンゾジアゼピン治療中、投与量の減量及び離脱の間における、ほぼ全てのウェイン・ダグラスの症状(ジャドソン医師の報告書に記録されている)は依存症及び自律神経系の活動亢進によるものであり、これはこのような状況ではよく起こることである」と専門的な意見を述べた(別紙⑤の2C-3段落)。

上告人が(1)耐性、また(2)離脱症候の基準を充足した上、(4)制御不能、(6)生活への打撃、(7)有害であることを知っているにもかかわらず使用を継続したことの基準も充足した。この事実は、提出済みの証拠(各カルテ)また、DSM-Ⅳ-TR 依存症診断基準を基づいて、中毒性薬剤専門医により決定されたものである(別紙②および③)。


ページトップに戻る

2.2.3 上告人が充足した5つの DSM-IV-TR 基準は、全体的臨床像の中で配慮されていない

上記の通り、「診断基準(DSM IV TR)を使いこなすには、問題全体につき(中毒性薬剤専門医による)熟考した洞察と判断を要する」。また、「これらの基準を適用する際に気を留めるべきことは、これは各基準を一つずつ検討するような単純なケースではないということだ。むしろ全体的臨床像の中で、それぞれの基準の関係を考慮しながら検討されるべきである」(甲A35-ジャドスン医師第3意見書1.2.2事項)。

しかし、判決書の内容を見ると、それぞれの基準の関係はもちろんのことですが、全体的臨床像の中の関連事実も分析に入れて配慮されていない為、中毒性薬剤専門医のように、正確な判断ができた筈はない。

全体的臨床像は下記の実例を含む。

(ア)

治療中に、治療を受けているにもかかわらず、上告人の症状が悪化して、また離脱症候による新しい症状も生じた事実(別紙②:甲A35-ジャドスン医師第3意見書2.2事項)。

(イ)

中止試みの不成功の一連(甲A39-ジャドスン医師第4意見書1.5事項)。

(ウ)

薬剤治療が有害であることを知っているにもかかわらず使用を継続した事実(別紙②:甲A35-ジャドスン医師第3意見書2.5事項)。

(エ)

X医師による薬剤療法の開始前、職責の軽い仕事とはいえ、日本でなお勤務し続けることができていたが、治療途中で契約通りの仕事をこなすことが難しくなり、続いて雇用契約の最後(3月31日)まで働くことができなくなった結果、3月25日を持って、1週間早く帰国せざるを得なかった事実(甲?-埼玉県国際交流協会の雇用契約)、(甲?-ニュージーランドへの航空券)。

また、契約解除後、ついには、1年以上もの間、再就職することができなくなるという状態に至った事実(甲A41-ウィットウェル医師のカルテ)、(甲?-Work & Income New Zealand –傷病手当金授与証明書)。

(オ)

上記の仕事の例を含め、生活への打撃は、治療前ではなく、治療後に起こった事実(別紙②:甲A35-ジャドスン医師第3意見書2.4事項)。

(カ)

ベンゾジアゼピンをやめた時、離脱症候に悩まされていた事実(別紙②:甲A35-ジャドスン医師第3意見書2.2.9事項)、(甲A41 -ウィットウェル医師のカルテ3頁)。

(キ)

第2意見書ではジャドスン専門医が意見を述べたとおり「ウェインはNZに帰国し、支えになる家族の元へ戻り、日本での職場環境などから離れたため、普通の場合、単なるストレスによる病状は落ち着いた筈であるものの、なお離脱症状に悩まされ続けていた」の事実(甲A28-ジャドスン医師第2意見書4頁)。

(ク)

第3意見書ではジャドスン専門医が意見を述べたとおり「ベンゾジアゼピンをやめた後、日本での生活と仕事に復帰することができ、現在継続中の賠償訴訟による更なるストレスの下にいるも関わらず、以前よりずっと良い健康状態を維持し続けている」の事実(甲A35-ジャドスン医師第3意見書3.1.9事項)。

注:相手側また高等裁判所側も上記の(ク)については説明・反論を一切挙げていない。さらに、つい最近の東日本大震災の影響を受けて、以前より大きな負担を負っているにも関わらす、ずっと良い健康状態を維持している。


ページトップに戻る

Share on FacebookTweet


シェアをして皆で注意喚起しよう



Share on FacebookTweet

日本語訳について

このサイトの主要言語は英語です。裁判で使用された日本語の原文を除き、日本語はすべて翻訳となっています。

その翻訳は私自身を含む複数の人によって手がけられました。従って、品質やスタイルなどに違いが見られます。

私の母国語は日本語ではありませんので何卒ご理解いただきたくお願い致します。その結果として、日本語が不自然に響く箇所があるかと思いますが、どうぞご了承ください。

デイヴィッド・ブランケット

ブランケット下院議員、ベンゾジアゼピンについて語る。

「これは国家的スキャンダルである!」

デイヴィッド・ブランケット(英国下院議員)
1994年2月24日

フィリップ・ウーラス

「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」

フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)

ヴァーノン・コールマン

「ベンゾジアゼピン系薬剤はおそらく、これまでで最も中毒性の高い薬物であろう。これらの薬を大量に処方してきた途方もなく大勢の熱狂的な医師達が、世界最大の薬物中毒問題を引き起こしてきたのだ。」

ヴァーノン・コールマン医師

薬という神話 (1992)

ジョン・マースデン

「もし何かの薬を飲み続け、それが長い長い災難をもたらし、あなたからアイデンティティをまさに奪い去ろうとしているのなら、その薬はベンゾジアゼピンに違いない。」

ジョン・マースデン医師
ロンドン大学精神医学研究所
2007年11月1日

ジェレミー・ローランス

「薬があれば、製薬会社はそれを使える病気を見つける。」

ジェレミー・ローランス (ジャーナリスト)
インディペンデント紙 (2002年4月17日)

マーシャ・エンジェル

「製薬会社に対して、彼らの製造する薬について公正な評価を期待することは、ビール会社にアルコール依存に関する教えを期待するのと同じようなものである。」

マーシャ・エンジェル医師
医学専門誌"New England Journal of Medicine"元編集長

当サイトには報復的な目的は一切ありません。また、プライバシー保護のため、当サイトに掲載される公的資料からは、被告人またはその他関係者の名前は削除されています。
©2012 Benzo Case Japan Programming by Butter

これまでの注意喚起活動、また被った損害 により、生活が困難になりました。皆様のご寄付による暖かいご支援をよろしくお願い申し上げます。お振込みによるご寄付の場合は、こちらをクリックして口座番号をご確認下さい