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第一章

 

1.患者の既往歴

1.1 治療前医療歴

1.1.1

ウェインは,5回目の日本への渡航以前,1999年(平成11年)5月,健康であった(バリー・テー・ハール医師作成に係る2006年(平成18年)10月19日付書簡[訳注:甲A19]参照)。


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1.2 患者概要

1.2.1

ウェインの当科における初診の際,大麻の使用(下記1.2.3記載),ニコチンとアルコールの使用(下記1.2.4記載)を除き,同人の薬物使用歴の記載は,同人が2000年(平成12年)に初めてX医師から処方されたベンゾジアゼピン療法に限られた。

1.2.2

当職と薬物解毒療法担当看護師(Detox Nurse;訳注:薬物依存症の治療のために専門的訓練を受けた看護師)が協同して,ウェインに対し詳細な問診を行ったところによると,同人は,従前,幻覚剤・アヘン薬・溶剤・興奮薬の使用歴がいずれも無く,2000年(平成12年)5月以来アルコールを控えていた。

1.2.3

ウェインによると,同人は,15歳から21歳にかけて大麻を使用したものの,21歳以降は大麻を全く使用していない。パーティーにおいて,約1本のマリファナタバコを約5人で分かち合って吸ったとのことである。

1.2.4

他の履歴としては,時々の飲酒と,未成年期の喫煙がある。ウェインは,同人が9歳の時,実際には何ら煙を吸入しないで「タバコで,一度か二度遊んだ」ことがある。次いで,同人は14歳から17歳にかけて常習的に喫煙していたが,本数は1日あたり約5本に止まった。同人はそれ以来,全く煙草を吸っていない。アルコールに関しては,同人は,時折パーティーにおいて,付き合いの範囲でビールを約グラス4杯(「標準アルコール飲料単位」[standard drink;訳注:10gの純粋なアルコールを含む飲料を「1 standard drink」と言う。]に換算して,6単位未満の量である。)を飲んだ。かかる程度のアルコール飲用は,標準アルコール飲料単位にして各回6単位未満・1週間21単位未満というニュージーランドにおいて推奨されている安全な飲酒ガイドラインの埒内のものとして,問題がない。

1.2.5

ウェインの経歴から,同人が薬物に依存するようなパーソナリティがあったことは窺われない。

1.2.6

上記の事実は,次の事実に照らすとき,さらに明白となる。すなわち,ウェインは,ベンゾジアゼピンの依存性を教わるや,ベンゾジアゼピン療法から離脱(退薬)することに殊に熱心となった事実,当時,ベンゾジアゼピンが同人のその時点の曖昧な諸症状の一部の原因となっているようであったとの事実。

1.2.7

さらに,失敗こそしたけれども,ウェインは,同人が当該薬物療法を受けている最中,当該薬物摂取量を減らそうとする試みを3度,行った。(1度目の試みは,2000年(平成12年)11月末,2度目の試みは,2001年(平成13年)3月初め,3回目の試みは,同月末。)


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1.3 薬物乃至処方履歴

原注:2000年(平成12年)7月5日から,2001年(平成13年)4月9日までの間の当該薬物使用の履歴については,ウェインと同人の弁護士であるA氏により当職に提供された情報に基づく。

下記は,処方にあるベンゾジアゼピン成分の内訳である。

 

処方医師
(病院)
服用期間 処方薬物 服用量
(mg)
製造名 化学名称
被告X医師(SKクリニック)

平成12年7月5日~

平成13年1月23日

コントール クロルジアゼポキシド 15
リボトリール クロナゼパム 0.9
グランダキシン トフィソパム 150
M医師(Oセンター)

同月22日~

同年4月9日

リボトリール クロナゼパム 1.2
コンスタン アルプラゾラム 1.2
ウィットウェル医師 前同日~同月19日 リボトリール クロナゼパム 1.0 ~ 0.5
ジャドスン医師 前同日~同年5月5日 リボトリール クロナゼパム 0.5 ~ 0.0

 

原注:2001年(平成13年)4月9日から2001年(平成13年)5月5日にかけての間の処方は,全て,ウィットウェル医師によってなされた。当職の役割は,漸減療法の過程でウェインを援助することであった。

上記記載のベンゾジアゼピン(クロルジアゼポキシド,クロナゼパム,及びトフィソパム)に加えて,ウェインは,X医師から,下記の薬物を処方された。

 

処方医師
(病院)
服用期間 処方薬物 服用量
(mg)
製造名 化学名称
被告X医師(SKクリニック)

平成12年7月5日~

平成13年1月23日

トフラニール イミプラミン 10
ケタス イブジラスト 30

 

原注:当職は,X医師によって処方されたベンゾジアゼピン(クロルジアゼポキシド,クロナゼパム,及びトフィソパム)が,袋に包装された粉末剤で全て一緒に混合されていたと聞いている。イミプラミンは錠剤で,イブジラストはカプセル剤である。服用量の変更は,1度も無かった。


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注 記

Upon advice from my lawyer, Dr. Judson recorded the history of symptoms below using the same wording that appeared in my handwritten notes to the prescribing doctor and the patient files that they were contained in. The purpose was to remain consistent with the evidence.

 

 

1.4 症状歴

原注:1.4以下の詳細については,ウェインが問診票に書いたものに則っている。

薬物療法前の症状

1.4.1

ウェインによれば,同人は,静岡でストレスの多い仕事についている間,以下の症状を呈した。かかる症状は,ストレスによる症状と一致すると認められる。

1999年(平成11年)10月ころ

  1. 手掌の発汗
  2. 息切れ
  3. 空回りする纏まらない思念
  4. 睡眠障害
  5. こめかみ付近の圧力
  6. 側頭静脈の膨張
  7. 疲労/だるさ

1.4.2

ウェインによれば,上記症状の大部分が2000年(平成12年)3月末に転職した後,消えた。

1.4.3

同人によれば,急性めまい発作に続いて,下記の症状が出現した。

2000年(平成12年)5月11日

  1. 一度きりの回転性めまい発作
  2. 嘔吐/吐き気
  3. 発熱
  4. 当初,立つことができなかった
  5. その後,1週間にわたる歩行困難
  6. 持続するふらつき
  7. 病気が何であるか分からないことについて続発性不安

原注:当職は,上記症状の原因が正確に何であるのかにつき,異なる見解が存することを理解している。

1.4.4

初診において,ウェインがX医師に上記症状(上記1.4.3)を含んだ,同人のめまい発作に関連した症状のリスト(訳注:乙A1の11頁以下)を手渡した。このリストの追加部分として,ウェインは,「その他」という標題の下で,下記の全般的な病歴を記載した(訳注:乙A1の12頁)。

1998年(平成10年)初頭~

  1. 肩こり

原注:それに伴い,首をゴッキと鳴らす癖がついた。

1999年(平成11年)4月~

  1. 虫歯(現在治療中)

原注:5月下旬以来,歯痛により頬骨に炎症を起こし,眼痛,扁桃腺も腫れた。

1999年(平成11年)6月~

  1. 少しだるくなっている

原注:来日してから,だるくなっている(環境の変化のせい)。

2000年(平成12年)初頭~

  1. 息苦しい
  2. こめかみ付近の痛みと,その周りの血管も腫れて来た(歯の治療を受けてからはこの症状はなくなった)。

2000年(平成12年)4月下旬から5月11日にかけて(めまい発作の時期)

  1. 非常にだるい
  2. 疲労
  3. 目が泳いでいる感じ

 

薬物療法開始後の症状

1.4.5

ウェインによれば,同人は,X医師による薬物療法開始後約2週間の時点で,下記の通り,当初では諸症状がいくらか落ち着いた。

2000年(平成12年)7月中旬より末にかけて

  1. めまいの落ち着き
  2. 不安の落ち着き

1.4.6

ウェインによると,X医師の薬物療法開始後約1か月半の時点で,ウェインには,持続する症状,悪化した症状,いくつかの新しい症状もあったとのことである。同人は,同人の新しい症状について,書面と口頭の両方で,定期的に訴えた。

2000年(平成12年)8月中旬より末にかけて

継続した症状(ウェインの話による)

  1. ふらつき持続(特に,皿を洗っている際や,シャワーを浴びている際には気分が悪い)
  2. だるさ・疲労(従前と同様)
  3. 息苦しさ(少しの改善)
  4. 目が泳いでいるような感じ(今は朝のみ)
  5. 足の弱い感じ(一度良くなったが,今は力が入りそうにない)
  6. ふらふらする感じ
  7. 夏ばて
  8. ストレスと疲労
  9. 肩こり

悪化した症状

  1. めまい
  2. 不安感
  3. 疲労の悪化
  4. (痔の悪化)

新たな症状

  1. 動悸 / 心臓のドキドキ感
  2. 食欲不振
  3. 口内潰瘍
  4. 慢性の喉の渇き
  5. ぶりかえす吐き気

1.4.7

ウェインによると,薬物療法開始後約4か月~6か月の時点で,同人の状態は悪化し続け,さらには,以下に述べる数個の新たな症状が生じた。

2000年(平成12年)10月より12月にかけて(ウェインの話による)

新たな更なる症状

  1. 耳鳴り - 11月から(就寝時や,起きがけに)軽い耳鳴りを出現
  2. 水晶体の濁り - 10月より,目の水晶体の染みのように見えるものが発現(右目で,目を閉じても見える。)
  3. 熱に対して敏感になった(体温が常に変化しているように感じる。)
  4. 普段より脈拍数が上昇
  5. ほてり
  6. 性欲低下
  7. 目を開けない癖の発現
  8. 朦朧とするようになった
  9. 胸部への圧迫感
  10. 時どきの胃痛
  11. 食欲減退/食欲不振
  12. 顎の硬化と痛みの増大
  13. 関節痛,関節硬化,筋肉の圧迫感,重苦しさ,痺れ感
  14. 10kg以上,体重が減少
  15. 頭の内側が引き攣り,脈動する
  16. 前額部から頭皮にかけての締め付け感
  17. 身体の虚弱化
  18. 感覚異常
  19. 視覚障害
  20. 睡眠障害の悪化
  21. 話しぶりが下手になった
  22. 過敏症
  23. 物音や光に対する過敏症
  24. 情緒不安定(パニック発作,不安,抑うつ,気分動揺,攻撃性を含む)

原注: また,ウェインによると,同人は,この時期において,情緒不安定感とパニック発作様病相(同人がそれ以前に体験したことのないもの)に苦しみはじめたと自覚した。ウェインは,これらの新しい症状について,書面と口頭の両方で訴えることを続けたようである。

訳注:「episode」を訳者は,ある高名な精神鑑定医の教示に従って,「病相(phase)」と訳したが,「挿話」と訳されることが一般である。

1.4.8

ウェインはOセンター(訳注:当時。現Sセンター)に治療先を変更し,問診票に以下の症状を記載したとのことである(訳注:甲A6の2頁)。

2001年(平成13年)1月21日

  1. めまい
  2. ふらつき
  3. 息苦しさ
  4. だるい
  5. 疲労
  6. 足の力が抜けたような感じ
  7. 首や背中の筋肉の痛み・硬化
  8. 吐き気(時々)
  9. 目がちかちかする
  10. 眼球の水晶体に傷ができているように見える
  11. いつもより頭が強く脈打つ感じ(特に寝ている時)
  12. あたまがフワッとする
  13. 平衡感覚低下
  14. 肩こり
  15. 静脈の圧力
  16. 口の潰瘍ができやすい
  17. 手の平の異常な発汗

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日本語訳について

このサイトの主要言語は英語です。裁判で使用された日本語の原文を除き、日本語はすべて翻訳となっています。

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私の母国語は日本語ではありませんので何卒ご理解いただきたくお願い致します。その結果として、日本語が不自然に響く箇所があるかと思いますが、どうぞご了承ください。

フィリップ・ウーラス

「我々の社会において、ベンゾは他の何よりも、苦痛を増し、より不幸にし、より多くの損害をもたらす。」

フィリップ・ウーラス下院議員
英国下院副議長
オールダムクロニクルOldham Chronicle (2004年2月12日)

ヴァーノン・コールマン

「ベンゾジアゼピン系薬剤はおそらく、これまでで最も中毒性の高い薬物であろう。これらの薬を大量に処方してきた途方もなく大勢の熱狂的な医師達が、世界最大の薬物中毒問題を引き起こしてきたのだ。」

ヴァーノン・コールマン医師

薬という神話 (1992)

ジョン・マースデン

「もし何かの薬を飲み続け、それが長い長い災難をもたらし、あなたからアイデンティティをまさに奪い去ろうとしているのなら、その薬はベンゾジアゼピンに違いない。」

ジョン・マースデン医師
ロンドン大学精神医学研究所
2007年11月1日

デイヴィッド・ブランケット

ブランケット下院議員、ベンゾジアゼピンについて語る。

「これは国家的スキャンダルである!」

デイヴィッド・ブランケット(英国下院議員)
1994年2月24日

マーシャ・エンジェル

「製薬会社に対して、彼らの製造する薬について公正な評価を期待することは、ビール会社にアルコール依存に関する教えを期待するのと同じようなものである。」

マーシャ・エンジェル医師
医学専門誌"New England Journal of Medicine"元編集長

マルコム・レイダー

「ベンゾジアゼピンから離脱させることは、ヘロインから離脱させるよりも困難である。」

マルコム・レイダー教授
ロンドン大学精神医学研究所
BBC Radio 4, Face The Facts
1999年3月16日

ヘザー・アシュトン

「長期服用者のうち15%の人たちに、離脱症状が数ヶ月あるいは数年持続することがある。中には、慢性使用の結果、長期に及ぶ障害が引き起こされる場合もあり、これは永続的な障害である可能性がある。」

ヘザー・アシュトン教授
医学博士、名誉教授
Good Housekeeping (2003年)

スティーヴィー・ニックス

「クロノピン(クロナゼパム)とは恐ろしい、危険なドラッグだ。」

スティーヴィー・ニックス(歌手)

ポール・ボーテン

この気の毒な問題に取り組む全ての関係者は、トランキライザー被害者の為に正義を提供するよう努めるべきである。

ポール・ボーテン(英国下院議員), 1994年

マーシン・スライズ

'benzo.org.uk'というサイトは実に素晴らしい。」

マーシン・スライズ
ロシュ社ポーランド 製品マネージャー

アンドルー・バーン

「ベンゾジアゼピンを飲むと災難がやって来る。」

アンドルー・バーン医師
オーストラリア, NSW, レッドファーン
ベンゾジアゼピン依存 (1997)

Informed Consent

The informed consent argument formed an integral part of the case because it was needed to prove negligence.

Without negligence there would have been no accountability, and therefore, no case from the outset.

In section 4 of his fourth report, Addictive Medicine Specialist, Dr. Graeme Judson explained the principles of prescribing and informed consent in relation to my case and sample applied.

Monitoring

The monitoring argument also formed an integral part of the case because it too was needed to prove negligence.

As above, without negligence there would have been no accountability, and therefore, no case from the outset.

As with informed consent, in section 4 of his fourth report, Addictive Medicine Specialist, Dr. Graeme Judson explained the principles of prescribing and monitoring in relation to my case and sample applied.

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